就職活動では「離職率」「平均勤続年数」「定着率」などの用語を耳にすることが多くなりますが、離職率の平均を知っていますか?
この記事では、「離職率とは」「離職率の平均値」「離職率と近い指標」などについて解説しています。
それでは早速「離職率の平均値」について、一緒に確認していきましょう!
離職率とは
離職率とは、「働いている人のうち何%が仕事を辞めたかを表す値」のことです。
離職率が高い企業は「給料が低い」「労働環境が悪い」「パワハラ・セクハラがある」「正当な評価が受けられない」などの問題を抱えている可能性があります。
そのため、離職率は就職活動や転職活動において企業を選ぶための基準の一つとなります。
離職率が低い企業が与えるイメージ
「離職率が低い企業」とは、どのような企業なのでしょうか。
一般論として、離職率が低い企業がどのような企業であると考えられているのか、どのような企業である可能性が高いのかを確認していきましょう。
全ての企業が下の項目に当てはまるわけではありませんが、「離職率が低い企業の全体像」を理解していると今後の就活・転職での企業選びに役立ちます。
従業員の出入りが激しい企業では、組織としての団結力が低下します。
取引先の企業や顧客からの信用低下
離職率が高い企業は、経営者の力不足や資金力不足などのイメージを取引先の企業や顧客に与える可能性があります。
新しい人材獲得が困難になる
新卒・中途に関わらず、その企業に就職するときの判断基準の一つとして離職率は大切な指標です。そのため、離職率が高いことは新規人材獲得に悪影響を与えます。
採用コスト・育成コストの損失
新規人材を獲得するには膨大なコストがかかります。また、新規採用者に研修などを行なうための育成コストも企業には必要です。離職率が高い企業では
企業イメージの悪化
企業の内情を実際に見ることはできないため、企業イメージは様々な数値から予測されます。離職率も企業イメージを決定する一つの要素なのため、離職率の上昇は企業イメージの悪化につながります。
離職率の計算方法
この記事では、次の方法で離職率の計算をしています。
離職率[%] = 離職者数 ÷ 1月1日現在の労働者数 × 100
つまり、離職率とは「1月1日からの一年間で、企業の従業員全体のうちの何%が離職したかを表す数値」のことです。
後で紹介する厚生労働省「令和4年上半期雇用動向調査結果の概要」でも同じ計算方法で離職率を算出しています。
離職率が高い=悪い企業とは限らない?
離職率が高い企業は、多くの人が辞めるため、悪い企業であるというイメージがあるかと思いますが、そうとは限りません。
離職率と企業評価の関係を見定めるうえで知っておいてほしいのは次の三つ場合についてです。
従業員が少ないと離職率は高くなる
従業員の人数によって、離職率の数値は大きく変化します。
次の二つの場合を例に従業員の人数と離職率の関係について解説していきます。
比較するのは「従業員100人の会社で10人が離職した場合」と「従業員5人の会社で1人が離職した場合」についてです。
それぞれの場合の離職率は次の通りです。
「従業員100人の会社で10人が離職した場合」では、「10人 ÷ 100人 × 100 = 10%」で離職率は「10%」となります。
「従業員5人の会社で1人が離職した場合」では、「1人 ÷ 5人 × 100 = 20%」で離職率は「20%」となります。
したがって、「従業員100人の会社で10人が離職した場合」の方が多くの人が離職しましたが、「従業員5人の会社で1人が離職した場合」の方が離職率は高くなりました。
正社員以外の出入りの激しい業界がある
離職率といっても計算方法は様々で、アルバイトやパートタイムなどの正社員以外の労働者も含めて離職率を計算する場合があります。
飲食業やサービス業などの正社員以外の労働者を雇いやすい業界では、正社員以外の従業員の離職率が高くなる可能性があります。
転職できないブラックな業界・企業がある
転職したくてもできないブラックな業界や企業もあります。長時間労働や休日出勤が多い企業がこれにあたります。
そのため、一見すると離職率が低い優良企業にみえても内情は真逆でブラックな企業であることがあります。
したがって、新しい就職先を見つけるときには離職率だけでなく、様々な側面から企業研究を行い、企業の本質を見極めるようにしましょう。
厚生労働省「令和4年上半期雇用動向調査結果の概要」とは
離職率の平均は厚生労働省が発行している「令和4年上半期雇用動向調査結果の概要」を見ることで知ることができます。
この調査は、日本の企業の入職や離職、未充足求人などについて説明した資料です。
この調査をみる際の注意点は、「日本の全ての企業がこの調査に回答しているわけではない」ということです。
令和4年の調査では、調査対象となった15,425の企業のうち回答した企業が9,029で、全体の58.5%のみ回答しています。
そのため、今回紹介する離職率は「日本全体の正確な離職率」ではなく「調査に回答した企業の離職率」という認識の方が正しいです。
離職率の平均値
今回就職活動や転職活動に特に関連のある「全体の離職率」「就業形態別の離職率」「業界ごとの離職率」について説明します。
なお、この三つの離職率の平均値はそれぞれ違う値になりますが、企業によって回答している項目と回答していない項目があるために差があるのではないかと思います。
全体の離職率
まずは全体の離職率についてです。
今回は平成30年(2018年)から令和4年(2022年)までの離職率と5年間の平均値を紹介します。
ここでの離職率[%]は、すべての労働者(パートタイムや一般労働者を含む)を表した値なので注意してください。
年 | 離職率[%] |
---|---|
平成30年(2018年) | 8.6 |
令和元年(2019年) | 9.1 |
令和2年(2020年) | 8.5 |
令和3年(2021年) | 8.1 |
令和4年(2022年) | 8.7 |
5年間の平均値 | 8.6 |
就業形態別の離職率
就業形態には、大きく分けて「パートタイム労働者」と「一般労働者」2種類があります。
「パートタイム労働者」は短時間労働者ともいわれ、同じ企業の正社員より一週間の労働時間が短い人のことです。「一般労働者」はパートタイム労働者以外の人のことです。
それでは、「パートタイム労働者」と「一般労働者」の離職率をそれぞれ5年分紹介していきます。
年 | パートタイムの 離職率[%] | 一般労働者 離職率[%] |
---|---|---|
平成30年(2018年) | 14.0 | 6.6 |
令和元年(2019年) | 15.3 | 6.8 |
令和2年(2020年) | 13.9 | 6.3 |
令和3年(2021年) | 12.9 | 6.3 |
令和4年(2022年) | 13.7 | 6.8 |
5年間の平均値 | 14.0 | 6.6 |
令和4年のパートタイム労働者の離職率は「13.7%」、一般労働者の離職率は「6.8%」となっています。
また、5年間の平均値はパートタイム労働者では「14.0%」、一般労働者では「6.6%」でした。
業界ごとの離職率
続いて、業界ごとの離職率についてです。
厚生労働省「令和4年上半期雇用動向調査結果の概要」では下記の16の業界について離職率を掲載しています。
この業界ごとの離職率については、一般労働者とパートタイム労働者のどちらも含まれているので気をつけましょう。
業界 | 離職率[%] |
---|---|
宿泊業、飲食サービス業 | 15.0 |
教育、学習支援業 | 12.2 |
サービス業(他に分類されないもの) | 11.1 |
生活関連サービス | 10.0 |
医療、福祉 | 9.9 |
不動産業、物品賃貸業 | 8.3 |
卸売業、小売業 | 8.0 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 7.5 |
複合サービス事業 | 7.4 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 6.6 |
情報通信業 | 6.4 |
運輸業、郵便業 | 6.4 |
製造業 | 5.5 |
金融業、保険業 | 4.7 |
建設業 | 4.5 |
鉱業、採石業、砂利採取業 | 3.8 |
全体の平均 | 7.96 |
業界別に離職率を比べると、離職率が一番高いのは「宿泊業、飲食サービス業」で「15.0%」、最も低いのは「鉱業、採石業、砂利採取業」で「3.8%」となっています。
また、上の16の業界全体の離職率の平均値は「7.96%」となります。
まとめ
今回は「全体の離職率」「就業形態別の離職率」「業界ごとの離職率」について紹介しました。
企業の離職率の掲載方法には様々な方法があるため、各企業の掲載方法に合わせて比較対象にするデータの種類を選びましょう。
より詳しく離職率について知りたい方は、厚生労働省「令和4年上半期雇用動向調査結果の概要」を自分でも確認してみることをオススメします!
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!
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